
1. 「求人が増えた、だから企業は強気だ」
「今は売り手市場だから、仕事は選べますよ」
就労支援の説明会でそう言われたとき、期待してしまった。
でも求人票を開くと現実があった。
たしかに数は増えた。
でも、その条件を見た瞬間に、俺は「無理だ」と思った。
「PC操作必須」「軽度の精神障害歓迎」「発症歴はあるが現在安定している方」。
求人は増えても、欲しいのは“障害者の姿をした健常者”だった。
「売り手市場だから、企業は選べる」
それが現実だった。
求人が増えたことで、採用のハードルがむしろ上がった。
数があるなら、良い人を取りたいに決まってる。
2. 「支援者に言われた言葉」
「求人はあるのに、なんで受からないの?」
「今は売り手市場なんだから、頑張らないと」
支援員はそう言う。
確かに求人は出てる。
でも、それが自分を雇ってくれる求人とは限らない。
履歴書にブランクがあって、短期離職歴があって、通院歴があって、面接でうまく答えられない。
「今は安定しています」と言っても、「本当に?」と疑う目を向けられる。
支援者の焦りもわかる。
「結果を出さないと支援の実績にならない」
だから言葉が鋭くなる。
「求人はたくさんあるんです。もう少し自分を変えましょう」
それは優しさじゃない。
ただの突き放しだ。
3. 「企業の採用会議で語られること」
企業も「法定雇用率」を埋めたい。
でも「現場の負担を増やしたくない」。
だから「即戦力になる障害者」を探す。
・指示を出したら理解して動ける
・コミュニケーションに問題がない
・急に休まない
・診断はあっても“ほぼ健常者”
売り手市場だからこそ、企業は強気だ。
「どうせ人はいるんだし、条件を下げる必要はない」
「いい人材だけ取ればいい」
その余裕がある。
増えた求人は、当事者のためじゃない。
企業の選別の自由を広げるためにある。
4. 「『売り手市場』を利用して、弾かれる人を黙らせる」
面接で落ちるたびに、履歴書を直すたびに、自分を責める。
「売り手市場なのに決まらない俺がおかしい」
「他の人は受かってるのに」
社会も支援機関もそれを期待してる。
「売り手市場なんだから、努力が足りない」
「求人があるんだから、選ばれる人にならないと」
そうやって、落とされ続ける人間を黙らせる。
「企業にも選ぶ権利がある」と言われたら、反論できない。
配慮を求めたら「それは他の人も同じ条件です」
「特別扱いはできません」
どこにも逃げ場はない。
5. 「求人票は増えた。でも未来は減った。」
求人は確かに増えた。
でも、通えない。
受からない。
続かない。
採用されても「安い契約」「昇給なし」「スキルも身につかない」。
求人が増えたことを盾に、企業も支援者も突き放す。
「選ばれる側にならないと」
「チャンスはあるのに活かせないのは自己責任」
そんな空気の中で、面接に落ちるたびに自尊心が腐っていく。
求人票が増えたぶん、未来は減っていく。
希望だけは見せつけられるけど、手は届かない。
それが「売り手市場」の正体だ。
「売り手市場」という言葉は甘い毒だ。
その増えた求人は、誰でも取れるチケットじゃない。
『お前は対象外だ』と静かに告げるリストだ。
それでも書類を送り続ける俺たちのことなんて、
誰も数えていない。

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