【発達障害当事者が語る】「非正規雇用は“踏み台”じゃなく“檻”だった」

看護

1.「俺はここで“実績”を積むはずだった」

俺は30代後半、発達障害の診断あり。
社会からドロップアウトして、やっと拾ってくれた仕事は契約社員のフルタイム。
「まずはここで実績を積んで、正社員を目指しましょう」
面接でも支援者でも、みんなそう言った。

でも蓋を開けたら、仕事内容はルーチン。
意見を言う機会はない。
成長できる仕事でもない。
「昇格は実績を積んでから」と言うけど、実績を積めるような仕事は回ってこない。

周りは新卒の正社員がどんどん育っていく。
課題を任され、プロジェクトに入る。
俺は「同じことをミスなく続ける要員」。
それが「合理的配慮」。

「お前はこの程度でちょうどいい」
そう言われてるのと同じだった。


2.「配慮は“足かせ”にもなる」

もちろん、合理的配慮はありがたい。
「難しいコミュニケーションを減らす」
「定型の業務を割り当てる」
「突発対応を減らす」

でもその配慮は、スキルを伸ばす機会も奪う。
「波がある人には任せられない」
「責任の重い仕事は負担になる」
「できることを確実にやってくれればいい」

そうやって、俺は「成長できない人材」にされる。
正社員登用面談では「契約社員としての安定稼働を期待している」と言われた。
ステップアップじゃない。
ずっとこの待遇で働けって意味だ。

支援者に相談すると「安定しているのは良いこと」「焦らなくていい」
でも生活はギリギリ。
将来はもっと不安。
親が死んだら?
病気が悪化したら?
家賃が払えなくなったら?

「甘え」だと言われても、怖いものは怖い。


3.「非正規の檻に閉じ込められる理由」

会社にとっては都合がいい。
障害者雇用枠でも、一般枠の非正規でも。
責任は持たせなくていい。
でもフルタイムで働いてくれる。
時給で、社保もギリギリ。
切りたければ更新しないだけ。

俺は「人件費の調整弁」だ。
非正規のままにしておけば、安く使える。
能力は「最低限」でいい。
成長はさせない、期待もしない。
でも辞められると困るから「配慮」という名目で繋ぎ止める。

支援機関も「就職実績」を上げたいから、非正規でも「就職成功」。
「本人の希望で更新を続けています」で書類は綺麗に締める。
でも俺の希望は「生活できる賃金と、将来の安心」だ。
誰もそれは責任を持たない。


4.「“努力不足”って言われても」

たまに正社員登用試験もある。
面談で「意欲はありますか?」
「積極性を見せてください」
「周囲と連携を取れるように」

でも発達障害特性で、説明が下手。
緊張すると支離滅裂。
同僚との距離感も掴めない。
言いたいことをうまく伝えられない。

結局「コミュニケーション能力が課題ですね」
「もっと成長意欲を見せてください」
「周囲からの信頼を築くことが大事」

合理的配慮はどこに行った?
配慮した業務で経験を積んだのに、その仕事では評価しない。
健常者の基準でしか見ない。
だから「登用不可」。

それを「努力不足」「自己責任」で片付けられる。
支援機関も「本人の希望次第ですから」
家族も「いつまで非正規なの?」
社会全体が「お前が甘えてるだけだろ」


5.「それでも、辞める勇気もない」

辞めればいい?
他に仕事がない。
また就活で落ち続ける。
年齢も上がる。
貯金も減る。
空白期間が増える。

正社員登用がなくても、今の仕事を辞められない。
食うために、住むために。
生活保護は親に扶養照会が行く。
親も高齢。
もう頼れない。

だから、今日も行く。
評価も昇給もない職場に。
消耗して、ミスして、怒られて、帰って寝るだけ。
それが一生続くかもしれない恐怖を抱えたまま。


6.「終わりに:この檻は、開かない」

「非正規から正社員を目指そう」
「まずは働ける場所を確保しよう」
「合理的配慮を活用しよう」

全部正しい。
でも嘘だった。
合理的配慮は「檻」を作る手段でもあった。
「成長しなくていい」
「責任は持たせない」
「でもずっとこのままいて」

登用制度はあるフリをする。
でも本当は「なるべく登用しないための試験」。
障害者は「コスト」でしかない。
だから最低限で使い潰す。

結局、自由はない。
金もない。
未来もない。
辞める自由もない。

それが「非正規から這い上がる」なんて綺麗事の、裏側だ。
そして「努力不足」「自己責任」「甘えるな」で片付けられる。
誰も責任は取らない。
この檻は、開かない。

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