
──能力より“感じの良さ”を測る社会で、俺たちは何度も落とされる
1.「スキルは問題ないけど…」で終わる面接地獄
履歴書には、ちゃんと書いた。
前職では、与えられた業務を正確にこなし、ミスも少なかった。
評価も悪くなかった。だから転職活動だって、実績で勝負できると思ってた。
でも、面接官はこう言うんだ。
「お話は分かりやすかったです。でも、少し印象が…」
「もう少し柔らかい雰囲気だと良かったかも」
「スキルは申し分ないんですが、うちの社風とは…」
──つまり、“感じが悪い”ってことだろう。
いや、俺は失礼なことは言ってない。
丁寧に答えた。ちゃんと目も見た。
でも、“雰囲気”が伝わらなかった。
ASDの俺は、面接という“感情のやりとりゲーム”に、最初から敗北していた。
2.“受け答えがかたい”と、“人間味がない”は紙一重
志望動機を聞かれたとき、
俺は論理的に答えた。
事業内容、キャリアの方向性、マッチするスキル。
きちんと順を追って説明した。
でも、面接官は苦笑しながらこう言った。
「すごく真面目なのは伝わったんですけど、もう少し自然体で大丈夫ですよ(笑)」
「なんか“台本読んでる”みたいな感じがして…」
──自然体って、なんだよ。
真面目に準備して、緊張しながら喋って、それでも足りないのか?
俺が演じていたのは“完璧な社会人”であって、
“好印象を残す陽キャ”じゃない。
でも、この国の面接では、“本当の理由”なんて求められてない。
求められるのは、“感じのいい言い訳”だけだ。
3.「空気を読む力」も「雑談力」も、求人票には書いてない
求人票には書いてある。
「Excelスキル必須」「業界経験3年以上」「チームでの協働経験」──
でも実際に落とされるのは、「なんとなく会話が噛み合わないから」だ。
ASDの俺には、“なんとなく”の敗因が、いつも最大の敵になる。
・質問が終わったあと、相手の目を見すぎて怖がられる
・返答の一言一句に正確さを求めすぎて、「固い」と言われる
・場を和ませようとしたのに、「それ今言う?」と苦笑される
──なあ、それ全部、求人票に書いておいてくれよ。
「アットホームな職場です」ってそういう意味だったのか?
4.沈黙も、“喋りすぎ”も、全部「減点対象」になる面接
俺たちは喋り方で減点される。
沈黙すれば「コミュニケーション力に難がある」と言われ、
詳しく答えれば「理屈っぽい」「会話が長い」と言われる。
たとえば…
面接官「自己紹介お願いします」
俺「○○大学を卒業後、××株式会社に入社し、5年間バックオフィス業務に…」
面接官「ちょっと、情報が多いですね(笑)簡潔にお願いします」
──簡潔って、どこまで? 何秒が“正解”?
言葉に正解がなく、評価が曖昧で、
“その人にとっての“感じの良さ”だけが正義になる。
ASDの脳は、“空気の採点基準”に一生適応できない。
5.書類は通る。でも、会って5分で「違う」と言われる
転職サイトのエージェントにはこう言われた。
「書類はすごく評価高いですよ」
「でも、面接が……なんというか、相手に刺さってない感じで」
──刺さる? 何に? 誰に?
俺が伝えたかったのは、能力だった。誠実さだった。
でも、そこに“熱意”とか“人間味”が足りないと判断されれば、即アウト。
能力主義なんて、幻想だった。
この国の採用は、「人柄ガチャ」だ。
スキルじゃない。履歴じゃない。空気のノリがすべてだ。
終わりに:「この社会に、俺の“言葉”は届いていなかった」
何度も、落ちた。
何度も、自分を直そうとした。
でも、“空気”を読むという技術は、努力ではどうにもならなかった。
ASDの俺が、ただまっすぐに想いを言葉にしても、
この社会では、“ズレた人間”として処理されていく。
言葉は通じてるようで、何も伝わってなかった。
そして、またひとつ通知が来る。
「選考結果のお知らせ:今回はご縁がありませんでした」

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