“障害者雇用は売り手市場”の嘘 軽度・ハイスペックが総取りする現実

看護

1. 「売り手市場って誰の話?」

最近のニュースや業界セミナーでは「障害者雇用は売り手市場」「雇用率未達企業が多数」「障害者を積極採用中」と煽る。
就労支援事業所でもそう教える。
「今はチャンスですよ」って。

でもその言葉を信じて、履歴書を何十枚も書く当事者は気づく。
「売り手市場」なのは、自分みたいなスペックの人間じゃない。

欲しがられるのは、
・学歴が高い
・職歴がある
・資格がある
・軽度の精神障害(しかも症状が安定している)
・コミュニケーション能力が高い

「障害はあっても仕事はできる人」だけ。
「配慮は最低限でいい人」だけ。


2. 「法定雇用率2.7%」の数字のマジック

法定雇用率が上がった。
企業は焦っている。
「雇わないと罰金を取られるから」。
だから求人も増えている。

でも増えているのは「入り口」の求人票だけだ。
面接に行ってみれば、「軽度」「就労経験あり」「スキルあり」が条件。
実質的な門前払いを食らう人が大半。

就労支援の現場でも、求人票を見せながら
「この案件はあなたは厳しいですね」
「ここはスキルが足りませんね」
とやんわり断られる。


3. 「障害者雇用市場の階層社会」

売り手市場といっても、中は格差だらけだ。

・ホワイト大手特例子会社 → 発達障害の軽度、精神障害の軽度で高学歴・高コミュ力
・事務系正社員 → 職歴や資格がある、コミュ力高めのグレーゾーン層
・契約・パート → 配慮が多いが単純作業
・A型作業所 → 最低賃金以下の労働
・B型作業所 → 工賃数千円

「売り手市場」なんて言葉は、上の層しか恩恵を受けない。
下の層には関係がない。
むしろ上の層が先に埋めてしまうから、残り物を取り合う。


4. 「選ばれるのは“障害のない障害者”」

企業が本当に欲しいのは「障害があっても健常者っぽい人」だ。
ちょっと疲れやすい、ちょっと不安がある。
でも仕事の進め方は問題なし。
トラブルも起こさない。

「障害者枠」という制度を使って、安く雇える即戦力。
制度上の数字は達成できるし、仕事も進む。
会社にとっては最高だ。

でもその枠が埋まれば、支援が多く必要な人は行き場がなくなる。
履歴書を出し続けても返事は来ない。
「売り手市場なんですよ、今は」
その言葉だけが空しく響く。


5. 「配慮はコスト、だから軽度しかいらない」

企業は合理的配慮をする義務がある。
でも現実は「なるべく配慮が少なくて済む人」を選ぶ。
・通院配慮?OK、でも月1回なら
・時短?OK、でもフルタイムがいいな
・コミュニケーション困難?ちょっと無理ですね

合理的配慮は企業の「負担」だから、減らしたい。
「できる人だけ来てください」
でもそれは言えないから「売り手市場」とごまかす。


「今は売り手市場だよ」
その言葉を信じた俺たちは、
ハイスペックの“障害者らしからぬ障害者”に
全部の席を取られて、
余った椅子を取り合っている。
それが“インクルージョン”の正体だ。

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