
1.「正社員面接に落ち続けて」
もう何十社落ちただろう。
短期離職を突っ込まれるたびに言い訳を用意した。
「キャリアチェンジを試みまして」
「家庭の都合で…」
「自己分析をし直したくて」
言いながら死にたくなった。
面接官は全部お見通しだった。
「またすぐ辞めそうだね」って目で見る。
質問が減る。
書類の束に戻される。
「結果は後日連絡します」なんて社交辞令だ。
結果が来るわけがない。
ある日、帰りの電車で鏡に映った俺はスーツがくたびれてシワだらけだった。
自分でも「こいつは取らないな」と思った。
その日を最後に、正社員面接は受けなくなった。
2.「派遣、日雇い、何でもいいから」
それでも食わなきゃいけない。
だから派遣に登録した。
説明会の段階で「直近の職歴は?」と詰められる。
短期の履歴を正直に書くと担当者の顔が曇る。
「希望職種を狭めない方がいいですよ」
要するに「どこも取らないから雑用でもやれ」ってことだ。
日雇いの現場は午前5時集合。
駅に並んでバスを待つ。
安い工事現場や倉庫でヘルメットをかぶり、誰でもできる仕事をする。
腰を痛めたけど休むと金が入らない。
残業も当たり前。
日当はその日のうちに消えた。
3.「『派遣切り』なんて優しい言葉」
契約社員にもなった。
半年更新。
「もしかしたら正社員登用もある」って言われたけど、そんな話は一度も出なかった。
仕事を覚えた頃に「更新なし」で切られる。
コストカット。
景気が悪い。
人が余ってる。
理由は何でもいい。
「派遣切り」なんて柔らかい言い方だ。
実際は「今日から来なくていい」だ。
荷物をまとめるときの視線が痛い。
周りも「自分もいつか」と黙り込む。
それが非正規の職場の空気だ。
4.「履歴書に書けない仕事しか残らない」
選べないから変な仕事もやった。
日払いバイト。
時給は最低賃金すれすれ。
派遣会社から指定された現場に行って、段ボールを運ぶ。
深夜のコンビニでシフトが埋まらないところに入る。
暴言を吐く客にも、無言で「温めますか?」
面接に行こうとすると空白期間だらけ。
「この間は何してたの?」
「えーと……派遣で、日雇いで……」
「履歴書にないですね」
「……」
終了。
5.「家族にも言えなくなった」
最初は親に「頑張ってる」って言ってた。
面接のたびに報告した。
でも落ち続けて、話せなくなった。
「まだ決まらないの?」って声を聞くのが地獄だった。
兄弟のグループLINEも抜けた。
既婚の友達とはもう連絡しない。
近況を聞かれるのが怖い。
「まだ派遣だよ」なんて言えない。
「俺も頑張ってるけどさ」なんて言われたら首を吊りたくなる。
6.「もう正社員を探すフリもしない」
求人サイトはもう開かなくなった。
「正社員募集」って文字を見るだけで吐き気がする。
どうせ落ちる。
受かってもまた辞める。
同じ履歴書に一行が増えるだけ。
もう十分だろ。
今は派遣会社のアプリで単発案件を見る。
「交通費なし」「時給1050円」「夜勤あり」
条件がゴミでも応募する。
それしか残ってない。
それで日払いの金を握って、コンビニで半額弁当を買う。
それが「俺の働く」だ。
7.「人生設計も老後もない」
こんな働き方じゃ年金も貯金も無理だ。
病気になったら終わり。
老後なんて考えたくもない。
死ぬまで働くって言うけど、体が壊れたら働けないだろ。
そのときはどうする?
知らない。
面接官は「長期で働けますか?」って聞くけど、
長期で雇う気がないのはどっちだよ。
社会のほうが俺を長期で使う気がないんだろ。
それをわかった上で「自己責任でしょ」って顔をする。
せめて「どうせ使い捨てるけど頑張れよ」って正直に言ってくれ。
8.「終わりに」
もう正社員は諦めた。
目指すフリもしない。
就活用の黒いスーツも捨てた。
ハロワも行かない。
支援員に「長期安定の仕事を」とか言われたくない。
今はただ、来週の飯代を稼ぐだけだ。
それが俺のキャリアプランだ。
未来?
ないよ。
そんなもん、何度も潰された。
もう一度立て直す気力なんか、どこにも残ってない。

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