貧困に転がり落ちる日常

看護

1.「貯金なんて一瞬でなくなった」

あの頃はまだ、わずかな貯金があった。
短期の仕事を続けては辞め、また探して、を繰り返す中で少しは貯めた金だ。
でも仕事を失ってからは、減る一方だった。

家賃を払った。
食料を買った。
光熱費を払った。
それだけで、通帳の残高は笑えるくらい減った。
不安で眠れなくなった。
「次の支払い、どうする?」
頭の中で繰り返す。


2.「節約は自分をすり減らす」

次に切ったのは食費だ。
米を買って、安いレトルトを乗せて終わり。
野菜も肉も高級品になった。
カップ麺を週に何度も食う。
飽きたとか、体に悪いとか、そういう感覚がどんどんマヒする。

友達を誘えない。
飲み会も外食も無縁になった。
LINEは未読が増える。
「最近どう?」って聞かれるのが怖いから。
「元気だよ」って嘘をつくのすらしんどくなった。


3.「滞納通知がポストに増える」

家賃の支払いが遅れた。
管理会社から封筒が来た。
電気代も払えなくて督促が来た。
水道もギリギリだった。

ポストを開けるのが嫌になった。
「もう来るな」って思った。
でも開けないわけにいかない。
中を確認して、深呼吸して、封筒を机に投げた。
それがルーティンになった。


4.「親に言えない、友達もいない」

いざとなったら親に頼めばいい。
そう何度も頭では思った。
でもできなかった。
電話をかけようとすると手が震えた。
あの沈黙が怖い。
「お前、またか」
「いつまでそんなことやってるんだ」
聞かなくてもわかる。

友達にも相談できない。
「仕事どう?」って話題から逃げた。
会わなくなった。
気づいたら連絡先が画面に残ってるだけになった。


5.「バイトすら落ちる現実」

金がなくなって、ようやく選り好みできないと腹をくくった。
求人票を見た。
「清掃」「軽作業」「深夜コンビニ」
全部応募した。

それでも落ちる。
理由は言われない。
短期離職の履歴か。
年齢か。
発達障害と書いてしまった支援経由の記録がどこかで回ってるのか。
わからない。
でも落ちる。
履歴書の送料だけが無駄に減った。


6.「福祉にすがろうとして門前払い」

「もう役所に行こう」と思った。
生活保護でも何でもいい。
でも相談窓口で聞かれた。
「ご両親は?」
「援助を受けられませんか?」
それを聞いただけで黙り込んだ。
担当者も面倒そうに「親族に相談してください」と言った。
終了だった。

帰り道、寒風が顔を刺した。
寒さで涙が出たのか、自分が情けなくて出たのか、もうわからなかった。


7.「物を売り、借りられるだけ借りた」

金がない。
クローゼットを開けた。
古いゲーム機、服、いらない本、全部メルカリに出した。
値段がつくものは減っていった。
でもすぐに消えた。

カードも使った。
リボ払いにした。
少額のキャッシングもした。
翌月の返済のことは考えなかった。
考えたら動けなくなるから。


8.「一歩も出られなくなった日」

ある日、もう外に出られなかった。
面接に行く服がない。
交通費がない。
そもそも落ちる未来しか想像できない。

布団をかぶって寝たふりをした。
スマホは鳴らない。
求人サイトのアプリも開けなくなった。
もう期待するのが怖かった。
落ちたらまた死にたくなるから。


9.「死ぬなと言われても」

「死ぬなよ」って、みんな軽く言う。
「何でもいいから働け」って言う。
「役所に相談しろ」って言う。
もう全部やった。
全部だめだった。

社会は俺を殺さないかもしれない。
でも、生かす気もない。
ただ放置する。
死なない程度に自分でなんとかしろ。
それが答えだって、俺はもう知ってる。


10.「終わりに:もう誰も知らない部屋で」

今、俺はこうして部屋にいる。
狭い、寒い、汚い。
吐くほど惨めだ。
でも外に出る金も気力もない。
面接の質問に答える自信もない。
社会に期待するのは、もう怖い。

誰も俺を殺しには来ない。
でも迎えにも来ない。
このまま静かに腐っていけというのが、きっとこの国の優しさだ。
だから今日も、布団の中で息だけはしている。
それしか、できない。

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