おはようございます。
親知らずを抜いた話
昨日は歯医者で親知らずを抜いてきました。
10年ぶり位に歯を抜いたのですが、抜く前は心拍数が爆上がりして動悸がしました(笑)
しかし、今までで一番上手に抜いてもらえました。想像してたより痛くなかったです。
今は麻酔もだいぶ進化してるんですね。
土日はランニングの習慣があるんですが、抜歯跡の出血がひどいので今週は見送りにしました。
代わりに文化的活動としてひたすら本を読んでました。
ケーキの切れない非行少年たち
宮口幸治さん著 『ケーキの切れない非行少年たち』を読み終えました。
タイトルのケーキを切れない非行少年と言うのは、丸いホールケーキを3人で分けるにはどうしたらよいか?
という質問に対して答えられない少年が多かったことが著者にとって衝撃的だったからのようです。
私も3等分なら書けますが、5等分と言われたらすぐに出てきません(笑)
著者は精神科医として、医療少年院(心身に著しい故障が見られる12歳以上26歳未満の者を収容する少年院のこと)
医療少年院とは?医療生活の実態 | 少年院.com (xn--0et88cjx0g.com)
に勤めていた経験と、そこでの気づきから非行少年を更生させるために開発した教育プログラムを紹介されています。
心身の著しい故障とは、ケガや病気の他にも身体・精神・知的障害者も含まれます。
著者は沢山の非行少年と出会う中で、非行少年(この本では男女問わず、少年と呼んでいます)に共通する特徴を見出します。
・勉強が苦手
・コミュニケーションが下手
・融通が効かない
・思い付きで行動する
・すぐに感情的になる
・相手の事を考えずに行動する
・力加減ができない
などなど。
さらにこれらの特徴の背景にあるものを分類し、
非行少年の特徴5点セット+1として紹介されています。
・認知機能の弱さ
・感情統制の弱さ
・融通の利かなさ
・不適切な自己評価
・対人スキルの乏しさ
+1 身体的不器用さ
以上です。
これらは発達障害や知的障害にも当てはまる部分が多く、
非行少年の半数近くが心理検査の結果、知的障害(IQ70以下)もしくは境界知能(IQ71~85)に相当するのではないかとも
言われています。
著者はこの後非行少年の特徴の解説、少年院に送られて検査を行い発覚するまで気づかれない子供たちの問題点等を指摘されています。
詳しく知りたい方にははぜひこの本を読んでいただきたいです。
ケーキの切れない非行少年たち (新潮新書): 宮口 幸治 + 配送料無料 (amazon.co.jp)
グレーゾーンの生きにくさ
学校で知的障害が発覚した場合、特別支援学級・療育手帳などの手厚い支援を受けることができます。
しかし、境界知能の場合はいわゆるグレーゾーンとも呼ばれ、『知的には問題なし』と判断されるのです。
2chや5chと言われるネット掲示板でも度々話題になる『ギリ健(ギリギリ健常者の意味)』もこの境界知能に相当します。
彼ら・彼女らは社会では健常者扱いなのに、学習面・身体面・社会面で困難さを抱えたまま生きているのです。
学生時代、クラスに何人かは思い当たる人がいたのではないでしょうか。
見た目はクラスの大多数と変わりなく、日常会話も問題ない。しかし、勉強・運動は苦手でどんくさく何をやっても上手く行かない。
人間関係も上手くいかず、孤立してしまう。仕事も出来ず・怒られてばかりで長続きしない。
こういった人たちのことです。
なぜ何もかもうまくいかない? わたしは「境界知能」でした | NHK | WEB特集
日常生活や勉強、仕事、人間関係などで困難を抱え、生きづらさを感じているにも関わらず、
教育や福祉の支援を受けられずに社会的な孤立や経済的な困窮に陥ってしまう人たち。
精神科で勤務していると、これらの特徴に当てはまる患者さんが沢山やってきます。
見た目は一般の方と何ら変わりない、もしくはイケメン・美女と呼ばれるだろうな、という人も多いです。
しかし、話してみるとどこか会話がぎこちなかったり、こちらの説明が理解出来なかったりします。
精神科で訴える症状は会社で孤立してうつっぽい・人間関係のトラブルで胃痛・気分の落ち込みが続いている等。
これだけ見ると適応障害や抑うつ状態のようですが、その背景には発達障害や知的な問題を抱えている人が多いのではないかと感じます。
薬やカウンセリングではどうにもならない問題の根深さ
精神科はお悩み相談室ではなく、患者さんが困っている精神症状の治療をする医療機関です。
例えば離婚問題が原因で落ち込み・吐き気・頭痛といった症状が出た場合、薬で症状を抑えられても離婚問題はどうにもできません。
離婚調停については法律家の範囲ですし、心理検査や心理相談は心理士の仕事になります。
患者さんの困りごとが薬では治療できない場合、カウンセリングや心理検査を行います。
ADHDやASDといった発達障害であれば、心理検査を行うと結果がはっきりと表れます。
ADHDであれば治療薬がありますし、ASDの場合はカウンセリングや認知行動療法で認知の歪みを矯正するといった流れになります。
しかし、境界知能、グレーゾーンと呼ばれる人たちはそもそも心理検査をこなすこと自体が困難だったりします。
カウンセリングを通して自分が無意識に行っている思考・行動を振り返る事自体が難しいのです。
認知行動療法も認知機能に問題ないことを前提に作られているので、認知機能が低い場合は暖簾に腕押しになってしまうのです。
特集 | 宮口幸治先生 インタビュー「しんどさに気づかれない子どもたち」【前編】 | 特別支援教育のトビラ (tokushi-tobira.jp)
こういった患者さんをどうやったら支援の輪につなげられるか?という視点は、
『ケーキの切れない非行少年たち』を読んで初めて気づかされました。
精神科を標榜する医療機関でカウンセリング・心理検査も一緒にやってくれる所はいくつかありますが、
そもそもカウンセリング・心理検査を受ける事も難しい患者さんへの対応まで行っている所はほぼ0に近いのではないでしょうか。
医療機関側も、『この患者さんはグレーゾーンなのでは?』と思う事は度々あります。
しかし、薬物療法・精神療法・心理療法だけでは根本的な解決にはならないのです。
私が不勉強なだけかもしれませんが、知る限り、境界知能・グレーゾーンの患者さんに対して『ここに紹介・相談しよう』という場所はありません。
思春期・青年期医療なら都立松沢病院・依存症治療なら久里浜医療センター、みたいな場所が無いのです。
答えは出なかった
『ケーキの切れない非行少年たち』の著者、宮口さんは『見る力』『聞く力』『考える力』といった認知機能が低く
困っている子供たちのために、『コグトレ』という学習法を考えられたそうです。
子供のうちに周囲の大人に気づいてもらい、支援に繋がることができるのは大変嬉しい事です。
しかし、誰からも支援を得られないまま大人になって現在も社会で困っている方は大勢いると思います。
そういった人達に対してどうすれば支援の輪を広げられるのか?私にはまったく答えが出ませんでした。
いつもは何かオチをつけて終わるのですが、今回は言いようのないもやもやが頭に残ったまま書き終わってしまいました。
境界知能・グレーゾーンと呼ばれる方々については勉強が足りなすぎるので、1から学び直します。
ここまで読んで下さりありがとうございました。
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