崩れていく毎日 ― ADHDの俺が事務職で抱え込んだタスクの山

看護

最初はうまくいってたんだ。入社して数週間、周りも気を使ってくれて、俺のペースに合わせてくれてた。
「ゆっくりで大丈夫ですよ」って優しく言われて、「ああ、この職場ならやっていけるかも」って思った。

でも、それは最初だけだった。

時間が経つにつれて、任される仕事がじわじわ増えていった。メールのチェックに始まり、データ入力、会議の資料作成、来客の受付。気づけば机の上は書類の山だった。
「このくらいできるよね?」って軽い調子で言われるたび、断れなくて「はい」と答える。
頭の中ではタスクを順番に並べようと必死なんだけど、途中で順番がぐちゃぐちゃになる。


忘れたふりをする俺

ある日、午前中に頼まれたファイル修正をすっかり忘れてた。午後になって上司に「できた?」って聞かれて、心臓が止まりそうになった。
慌ててPCを開いて、「今やってます」と取り繕ったけど、冷や汗でシャツがじっとり濡れてた。
こういうのが積み重なると、「こいつに頼むと遅い」と思われて、同僚の顔つきが変わっていくのがわかる。
自分の信用が目に見えて削れていく。


マルチタスクの地獄

一番きついのは、複数の作業を同時進行しろって言われること。
エクセルに数字を入力しながら、メールで取引先に返信して、その途中で電話が鳴る。
頭がバラバラに引っ張られて、どれも中途半端になる。
電話を切ったあと、「あれ、何をしてたんだっけ?」と固まる。
気づいたら、入力し忘れたデータが何十件もあって、全部やり直し。
「確認はちゃんとしてくださいね」と言われて、うなずくけど、心の中では「無理だよ、そんなの」って叫んでる。


周囲のイライラ

同僚の態度が変わるのは早かった。
最初は「大丈夫?」「手伝おうか?」と声をかけてくれてたのに、最近はため息をつかれることが増えた。
コピー機の前で資料を揃えてたら、後ろに並んでた先輩が「遅いなあ」ってつぶやいた。
それが耳に入って、手が震えて紙を落とした。拾いながら、涙が出そうになった。

会議では、俺の作った資料の数字が間違っていて、課長に「これ訂正しておいて」と冷たく言われた。
会議室を出たあと、背中に視線が突き刺さるように感じた。
「またあいつか」って思われてる。そう感じるだけで、心が削られていく。


「努力不足ですか?」

ミスが続いたせいで、上司に呼ばれた。
「最近ミスが目立つね。どうしたの?」
どうしたもこうしたもない。最初から俺の頭はこうなんだ。
でも正直には言えなくて、「気をつけます」と答えた。
「努力すれば改善できるよ」と励まされたけど、それが一番つらい言葉だった。
努力しても変わらないことがある。俺はずっと努力してきたのに。


帰宅後の崩壊

家に帰ると、もう体が動かない。
洗濯物も溜まりっぱなしで、シンクには昨日の食器が残ってる。
布団に倒れ込んで、スマホを握りしめたまま眠る。
朝になればまた仕事。昨日のミスを引きずったまま、今日も同じ机に座る。
少しずつ少しずつ、心も体も削られていく。


気づけば孤立

気づいたら、誰とも雑談しなくなってた。
昼休みも一人で食堂の隅に座って、スマホを眺めるふりをする。
誰かが笑っているのが耳に入ると、「俺のことを言ってるんじゃないか」って被害妄想みたいな考えが頭をかすめる。
実際は違うんだろう。でも、もうそう思わずにはいられない。


それでも辞められない

ここまで読んだ人は「そんなに苦しいなら辞めればいい」と思うかもしれない。
でも辞めたら、次がある保証なんてない。
障害者雇用の求人は確かに増えてる。でも条件のいい仕事は「安定して働ける人」向けで、俺みたいに波が激しいやつは弾かれる。
だから必死にしがみつくしかない。
その必死さが、余計に周りをイラつかせる。


終わりの見えない疲労

結局、俺は今も続けてる。
でも、いつまで持つのか自分でもわからない。
ミスをするたび、周囲の空気が冷たくなっていく。
毎日、崩れていく自分を感じながら、それでも机に座り続ける。
「定着」という言葉がこんなにも苦しいものだなんて、働く前は知らなかった。

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